クルマ選びも作品づくりも「ランダム」な出会いから。偶然の美学がカッコいい日産サファリ。(Nissan Safari Y60)

クルマ選びも作品づくりも「ランダム」な出会いから。偶然の美学がカッコいい日産サファリ。(Nissan Safari Y60)

高い天井と大きな荷室。無骨なオフローダーが描く日常

今回紹介するのは、プロダクトブランド〈LUCKYCHAIN〉を手掛けるイナヌマさん。
〈LUCKYCHAIN〉と言えば、最近「事故車キーホルダー」が話題だよね。
そんなイナヌマさんが新たに手に入れたと誇らしげに見せてくれたのがこのサファリ。

全長約4.88メートル、装着しているルーフラックを含めれば全高は2.15メートルに達する。
満タン給油で約1万5,000円が飛んでいき、燃費はリッター約4キロ。
都心の立体駐車場は入れないことが多く、平面駐車場の枠線さえ少し狭く見えてしまうほど。

1980年代後半から90年代にかけて生産され、世界中の悪路を走破してきた名車、日産サファリ(Y60型)は、現代の都市においては少し不器用で、過剰に頑丈な存在。
しかし今、その武骨なクルマの車内には、2歳と0歳の子どもたちの声が響いている。

かつてプロボックスに乗っていたイナヌマさんが、家族が増えることを機にサファリを選んだ理由は、ランダムな出会いを大切にするイナヌマさんらしいものだった。

「今日すれ違った中で、一番かっこいい車にしよう」

そんな家族との会話の中、街で偶然すれ違った一台のサファリに一目惚れ◎
翌朝にも同じサファリとすれ違った瞬間、イナヌマさんは「これは買えということだ」と確信して購入!
以来、運命を引き寄せたその個体となぜか一度も再会していないというエピソードも、街が仕掛けた魔法のようでグッとくる。

一見するとファミリーカーのイメージからは遠いオフローダーだけど、頭上に広がる高い天井は子どもたちの世話も楽々で、広大な荷室はベビーカーも軽々と呑み込んでしまうという。

棒の倒れる方へ進む。「自分の中からの選択」を手放す生き方

「自分の中からの選択ほど、意味がないと思うんです」
イナヌマさんはそう教えてくれた。

あらかじめ調べ尽くして最適解を選ぶのではなく、自分の外側にある環境や、偶然の出会いに身を委ねること。
そんな「先が見えないことは楽しい」という価値観を象徴するのが、イナヌマさんが約10年前に始めた『ボープランの旅』という遊び。
T字路やY字路にぶつかるたび、一本の棒を地面に倒して、ただ棒が倒れた方向へと進んでいく。

どこへ辿り着くかもわからない道中で、自分の頭の中だけでは到底思いつけなかった予期せぬ景色や出会いを受け入れること。
サファリとの運命的な出会いもまた、そんなイナヌマさんが人生の軸としてきた「ランダムな価値観」の延長線上にあるのかも?
情報であふれる現代において、自らのコントロールを手放して偶然を信じる生き方は、サファリのどこかタイムレスな佇まいと深く共鳴しているようだった。

壊れたミニカーの記憶と、クルマ選びがもたらした不便という余白

この「偶然を受け入れる」美学は、イナヌマさんのモノづくりや日常の感性にもしっかりと息づいている◎

後に立ち上げたプロダクトブランド〈LUCKYCHAIN〉の「事故車キーホルダー」も、交通安全の展示会でポカリと空いた棚を埋めるために作った立体作品がきっかけなんだとか。

計算された完璧さよりも、環境や不規則さといったランダムから生まれるストーリーに惹かれるイナヌマさんにとって、都心で駐車場探しに苦労することや不便な燃費さえも、暮らしを彩る余白に変わっていく。


「選んだ」のではなく、「出会ってしまった」サファリ。
偶然が紡ぐ縁を大切にするイナヌマさんの生き方は、愛車選びにも色濃く表れているのだった。

text: Rio Yoshinoedit: Kazuki Munakata

photo: Makoto Nakamura

CCG'S Good Point

偶然の出会い度
無骨なファミリーカー度
日常での頼もしさ

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