下高井戸の街に馴染む、気取らない床屋。
今回、エンドウさんに紹介してもらって訪れたのは、東京・下高井戸にある理容室〈BARBER SAKOTA〉。
交通量の多い甲州街道から一本入ると、昔ながらの商店が軒を連ねる下高井戸の街並みが広がる。駅近くのコインパーキングにクルマを停めて、商店街を少し歩くと、小さなフラワーショップの向かいに、大きなガラス窓が印象的なお店が見えてくる。
店内に足を踏み入れると、年代物のバーバーチェアや、横一列に並んだ待合用の椅子が目に入る。大きな窓から自然光が差し込む空間は、すっきりと清潔感がありながらも、どこか優しくて落ち着ける雰囲気。
お店を営むのは、エンドウさんの高校時代の同級生であるサコタさん。
二人は学生時代から服や音楽、スケートボードなど、共通の趣味を通じて親交を深めてきた旧知の仲。
エンドウさんが髪を切るタイミングでCCGも一緒にお店にお邪魔させてもらうことに!
〈BARBER SAKOTA〉がオープンしたのは、2016年。
アメリカのバーバーカルチャーというと、西海岸の開放的でワイルドな雰囲気を思い浮かべる人もいると思うけど、サコタさんが目指したのは、ニューヨークの街角で見た床屋。
そこで目にしたのは、特別に着飾った空間ではなく、子どもから大人まで、近所の人たちが当たり前のように通う日常の風景だったという。
気取らず飾らず、清潔感のあるクリーンな東海岸のような空気感が下高井戸の〈BARBER SAKOTA〉にも流れている。





好きなものを詰め込みすぎない、自分らしい店づくり。
〈BARBER SAKOTA〉の店づくりには、サコタさんがこれまで触れてきた音楽やファッション、スケートボードなど、さまざまなカルチャーが少しずつ反映されているんだって。
お店のオープンの際にも、内装についてもサコタさんなりのこだわりがあった。
目指したのは、いかにもデザインされた美容室のような空間ではなく、もう少し肩の力が抜けた、気取らない雰囲気。
どこかメカメカしさのあるかっこいいバーバーチェアはオープン当初から使い続けていて、座面を張り替えるなど、必要に応じて手を加えながら今も現役で活躍しているんだって。
10年という時間を経て、少しずつ使い込まれた表情が加わっているけど、その佇まいは今見ても古さを感じさせないのはクラッシックカーのよう。
一方、待合用の椅子は、サコタさんが内装を考えていた際にネットオークションで偶然見つけたもの。
当初はソファーを置く案もあったそうだが、サコタさんは長いベンチのようなものをイメージしていたんだそう。
そんなときに見つけた6脚の椅子が、サイズもぴったりだったことから購入を決めたんだって。
何かのスタイルに合わせて空間を整えるというよりも、自分が素直に良いと思ったものを選んでいく。その選択の積み重ねが、サコタさんの優しくて芯のある人柄と相まって、結果として〈BARBER SAKOTA〉らしい雰囲気を作っていると感じる。





街に溶け込む、いつもの床屋として。
〈BARBER SAKOTA〉がある下高井戸は、昔ながらの商店街と住宅街が広がる、どこか懐かしさの残る街。
実は、サコタさんが最初からこの街でお店を開こうと考えていたわけではなかったんだって。
当初は別の場所での開業を検討していたものの、さまざまな事情から実現には至らず、改めて物件を探すなかで出会ったのが現在の場所だった。
それまで下高井戸には特別な縁がなかったというサコタさん。それでも、実際にお店を構えてみると、この街ならではの面白さを感じるようになったそう。
わざわざ渋谷や原宿、表参道まで髪を切りに行かなくても、近所に気に入った床屋があればいい。そんな考えが、お店のあり方にもつながっている。
実際に訪れるお客さんも、20代から30代を中心に、年配の方から小さな子どもまで幅広い。そこには、サコタさんがニューヨークで目にした、街に根ざしたバーバーの風景にも通じるものを感じられた。
エンドウさんも、そんな〈BARBER SAKOTA〉に定期的に足を運ぶひとり。
高校時代からの付き合いというふたりも、今ではそれぞれに仕事があり、家族があり、当時とはずいぶん生活も変わった。それでも、髪を切りながら近況を報告し合ったり、ふと昔の話になって懐かしんだり。そんな何気ない時間が、今も変わらず続いている。
大人になると、昔からの友人と顔を合わせる機会も少しずつ減っていくけれど、髪を切るという日常の習慣が、ふたりの関係を自然につないでいるのも、なんだかいいなと思える。
ファッションや音楽といったカルチャーを背景に持ちながらも、決して特別な場所にはしない。誰もが気軽に立ち寄り、いつものように髪を切って帰っていく。
〈BARBER SAKOTA〉には、そんなサコタさんが思い描く、気取らない街の床屋の姿があった。
クルマで甲州街道を走っていると、つい通り過ぎてしまう下高井戸。
けれど、少しクルマを停めて街を歩いてみれば、こんな素敵なお店や、そこに流れる人と人との関係に出会える。
いつもの道を少し外れてみるだけで、知らなかった街の魅力が見えてくる。そんなことを感じた一日でした。





text: Kazuki Munakataedit: Kazuki Munakata
photo: Makoto Nakamura
- Insta
- @barbersakota
- 営業時間
- 10:00〜20:00/不定休
- 駐車場
- 無





